触らぬ愛に祟なし3
「エイデン、さっさと校庭行こうぜ」
ドア付近でレナールがスタンバっている。相変わらず着替えるのが早い。
「分かってるって」
急いで体操着に着替え、支給されているゴム製の短剣を持つ。
「遅いよ。お前」
「レナールが早いだけだろ」
授業が終わったと同時に着替え終わっている奴に比べたら遅いだろう。
「だって体育だぜ、次。しかも魔道具使った実戦だろ。楽しみでしかねぇ」
「……良かったな」
体育自体嫌いなのに、魔道具を使った実戦なんて憂鬱でしかない。今すぐ駆け込みたいが、そんなことしたらあの人に会えない。
「全員、揃ったな」
体育教師が、出欠の確認をとる。……名前何だっけ?
「なぁ、あの先生の名前何だっけ?」
さすがは友と言ったところか。レナールが小声で聞いてきた。
「知らね」
「まぁ、入学して1ヶ月しか経ってねぇし、仕方ねぇか」
まぁ別に体育教師の名前何ぞなんでもいい。その後ろに立っている先生が今日も美しい。
「今日の実戦についてなんだが、ゲネシス先生お願いします」
「はい」
ああ、相変わらずのイケメンボイス。
「今日の実戦ですが――」
腰まである艶やかな黒髪が風になびく。その髪を耳にかける動作がやっぱり美しい。
何でこんなに美しいんだ。天使だ。天使に違いない。ゲネシス先生天使説(レナール提唱)は、もはや真実だろう。
「――ということですので、よろしくお願いしますね」
しまった。聞いてなかった。まぁいつもの事なんだけれど。
「レナール、なんて言ってた?」
「お前、また聞いてなかったのかよ」
レナールが肩をすくめる。
「対戦相手はあっちが決めてくれて、相手を追い詰めたら勝ちだと。そんで、支給されてる武器の魔力の使用禁止。まぁ、この前と一緒だな」
「ありがと」
「まぁ、お互い頑張ろーや」
「おう」
この前、全戦全敗したんだけど大丈夫だろうか。