触らぬ愛に祟なし2
ここまで、この神駒を追いつめたのは初めてだ。
「先程も問いましたが、てめぇは誰の駒だ?」
「九十九回目にして、ようやく追いつめることができましたか」
「質問に答えろ」
「ですが、創造の神(ゲネシス)様あなたは負けます」
余裕に満ちた顔で、刀を小さく振り衝撃波を繰り出した。別になんともないはずだった。後方から悲鳴が聞こえるまでは。
急いで聞こえた方に走る。そこには、逃げたはずのエイデンがいた。なんで、お前は戻って来たんだ。ふざけるな。そういった言葉を飲み込んで、エイデンを抱きかかえる。
頭を打ち付けたのだろう、血がそこから流れていた。反射的に回復魔法をかける。だが、認めたくないけれど治らない。
「逃げろと言いっただろ。どうして……どうして戻ってきた!」
思わず声を荒らげる。そんな私に彼は微笑んだ。
「だって、君にばっかり、たた、戦わせるわけ……にはいか、ないから」
力ない声。戻ってこなければお前はまだ、生き続けることができたのに。
「俺のためにお前の命を犠牲にすんなよ……!」
こらえきれなくなって涙をこぼす。それを彼が弱々しい手つきで拭いとってくれた。
「好きな、人を助け、たいと思うのはとうぜ……ん」
彼はそのまま安らかに眠ってしまった。先程まで私の涙を拭っていた手を握る。
「それはこっちのセリフだ、バカ」
もうこいつには届かない。
こいつの死を何回も何十回も見届けたけれど、慣れることはない。ただただ心が痛い。
「創造の神(ゲネシス)様、またお手合わせお願いしますね。百年後を心待ちにしております。」
いつ間にか近くにいたらしい。神駒はそう言って消えてしまった。天界に帰ったのだろう。
百年後、次こそは神駒を追いつめる。
そして、お前をエイデンを――。