野奈の小説集

小説を投稿していきマース

駄べり部の一日(後編)

「颯星、光太郎ちゃぶ台どかせ」

 

やっぱり、動かすようだ。

 

俺と熊谷先輩は立ち上がり、ちゃぶ台を端に

よせる。

 

そのまま俺らも壁際にたつ。

 

「約束を守らない奴はコショコショの刑だ!」


「あっはっはっはっはっはっはっは、ちょっ、先

輩やめっ、あっはっはっはっはっ」


……楽しそうだな。

 

「……楽しそうだな」


やっぱり、熊谷先輩も同じことを思っていたらしい。

 

隣にいる先輩に顔を向ける。


「俺らもやりますか?」


「残念、俺は効かないんだ」


「そうですか……まぁ俺も効きませんけど」

 

「どうだ! 来週はちゃんと持ってくるか!?」


「あはっ、持ってきますんでははっ、やめてく

だっ、さいっ、あっははっ」


「よし、絶対持ってこいよ」


やっと、終わったらしい。

 

解放された手島の顔はものすごく赤くなって

いた。


「もう、少しは手加減してくださいよ忠喜《た

だのぶ》先輩」


「お前が持ってこないのが悪いだろ」 

「二人とも立ってください。 ちゃぶ台元の位

置に戻しますんで」


先程と同じように熊谷先輩と一緒に運ぶ。

 

運び終わり席につく。


「思ったんだけどさ、柳橋


「何さ急に」


「絶対は絶対にないだろ」


熊谷先輩、キメ顔である。

 

「「……ブハッ」」


俺と部長が同じタイミングで吹き出す。


「おい、何がおかしい!?」


「いや、だって……あっはっははは…なぁ分かる

だろ? 光太郎?」

 

「えぇ、わっ、ヒヒっ分かりますっよっ……ちょ

っ、手島? せっ説明……してやっヒヒって」

 

唯一、笑わなかった手島に説明してもらう。


「きっと、颯星先輩のキメ顔がウケたんじゃな

いんすか?」

 

「いや、まぁそれもそうだけど」


ようやく笑いが治まった。部長はまだ、笑って

いる。 

 

これは、俺が説明するしかないようだ。


「熊谷先輩、絶対は絶対絶対ないんですよ

ね?」


「ああ、そうだが……あっ」

 

熊谷先輩の顔が赤くなる。


笑いがようやく治まった部長が煽り始めた。

 

「絶対はないって言うなら分かるよ。

でもさ、絶対は絶対にないっていうのはさー絶

対はないって言ってんのに使ってるっていう

ねー……あっははっ」

 

再び「もう、俺の言ってる事も分かんねぇ」と言

いながら部長が笑い始めた。

 

俺も便乗する。


「しかもキメ顔つきですからねーおかしなこと

言ってんのにー」

 

熊谷先輩が急に立ち上がった。


「帰る!!」


カバンを持ち、部室を出ていった。


「あーじゃー俺も帰るー」


部長は急いでリュックを背負い、そそくさと

出ていった。

 

きっと、いや絶対熊谷先輩を追いかけて言っ

たな。

 

ああ、絶対はないんだっけ。

 

まぁ、そんなことはどうでもいい。

 

「俺らも帰るか?」

 

手島に話しかける。

 

「おーけーろーけーろー」

 

「それ、カエルの鳴き声みたいに聞こえるって」

 

「それ、前にも言われたー」

 

「あれっ? そうだっけ? まぁいいや。部室の

鍵、返しに行こうぜ」

 

「おー」

 

来週もこんな調子でどうでもいいことを駄べ

って終わるんだろうな。

 

ーENDー

 

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